本書は日本における奇怪なM&Aの実態を事実をもとに描き出した作品です。
「不思議の国」とは言い得て妙だと思いました。
具体的には、価格を議論せずに抽象論だけでM&Aを合意するケース(HOYAとペンタックス、UFJと東京三菱、楽天とTBS)や提示価格の低い方に売却されるケース(王子製紙と北越製紙、新日本無線、ニッポン放送)などの事例を挙げて、いかにこの国のM&Aが理不尽な慣習のもとに行われているかを鮮やかに語っています。
第一線の記者としての現場感あふれる記述は非常にエキサイティングであり、また、事実に基づいた非常に客観的な描写であるため、より一層「奇妙さ」がひきたつ印象を受けました。
ともすれば、引用されているコメントを発した本人を個人的に愚弄するかもしれないような内容になっていますが、そこはこの国のM&Aが正常化することを切に願う著者の思いや、日本を代表する経済紙としての出版社の自負や威厳を感じました。
その思いを強く感じ、5点。力作だと思います。