※これはメディアファクトリー版(村山由佳訳・トーベヤンソン絵)についてのレビューです
自分は耽美・ゴシック・ナンセンス…なモチーフとしての
アリスについては無知な人間ですので(このくくりも間違ってるかも?)、
この意見は熱心なアリス好きの方にはしっくりこない感想かもしれません。
という事を先に書いておきます。
魅かれたのは、とにかく絵です。
ムーミンでおなじみのトーベ・ヤンソンがアリスの挿絵を描いている。
でもそのアリスは本国でも絶版らしい…。
なんて情報を持っていた一ヤンソン好きにとっては、
この本が日本で新たに出版されたという事実だけで買うしかありませんでした。
その、絵のほうは、申し分なし!です。
ヤンソン氏が彼女らしい世界観で描いた独特の世界。
得意の動物は勿論いきいきと描かれているし、人物も表情豊かで面白い。
それになんといっても色彩の美しさがこの人ならではです。
孤独で寒そうな感じも健在でイギリスという感じがしません。(ほめてます)
村上由佳さんの文には初めて触れましたが、自分にとってはとても読みやすくてよかったです。
ナレーション部分が語り口調のアリスというのも初めてでしたが、これがとてもいいんです。
自分もルイスにお話を読んでもらっているような気になって、
今までにないくらいアリスに感情移入できました。
テニエルの絵で醸し出される緻密で謎めいたアリスの世界はここにはありませんが、
それだけに今まで苦手だった人にも楽しめるのではないでしょうか。
爽やかな夏の午後を、ボートに乗りながら、
愉快で滑稽で孤独で愛おしい物語に費やす感覚が味わえると思います。
バラの紅茶も美味しいけれど、レモネードも、そう悪くないですよ。