社会主義の中国で、本格的な社会意識調査ができるようになった−そのこと自体がまことに大きな変化であり、個人的にはもっとも強い感銘を受けた。本書は、そのような本格的な社会意識調査の結果をもとに、現代中国人の意識を照射したものであり、巨大すぎる国家・中国を考える上で非常に役に立つ知見を与えてくれる。
例えば、筆者が膨大な調査データの解析から導き出した結論は「過去へ進化する社会主義」というものである。新たに台頭してきた中間層は学歴の高いエリートであり、その高学歴階層に経済的・政治的・文化的資源が集中して与えられており、かつエリートは人民のことを考えねばならないと期待され、エリート自身もそれを自覚しているという状況は、まさに伝統的な「士丈夫」階級を想起させるものだからだ。そしてそれが「進化」であるのは、「文」に偏重していた伝統的士丈夫階級とは異なり現代中国エリートには理系が多いなど、現代の状況に適応して変化したものだからである。彼らは中央政府への忠誠心が強く、政治的には保守的である。中国政府は、都市部には確実な支持層を獲得していると言える。非常に貴重な知見である。
ただし、本書で縦横に分析されている調査データも、対象が都市部に限定されているという限界はある。貧困のままに取り残された農村部の民衆がどう感じ、何を考えているのかを知ることは、今後の中国社会の動向を考える上で非常に重要だと思われるが、そこまでは調査が及んでいない。それでも、都市に流入してきた出稼ぎ農民の意識調査があり、「長く都市にいる者ほど不満が高い」という傾向が現れるなど、貴重な知見が述べられている。
巨大な「不平等国家・中国」は、これからどうなっていくのか。
中国のこれからに関心のある人にとっては必読の書と言える。