禅僧→キリシタン→棄教→「野人」という転変を果した近世の傑物について、人気の真宗僧侶×宗教思想家が独自の解読を行った作品。仏教の性向である徹底相対化の理智を体得しつつ、しかしキリスト教がもたらした「絶対」の「神」と「救済」の信仰に魅了されたハビアンの見た世界とはいかなるものだったか、これを主に彼のテクストによりそいつつ明らかにしていく。
キリシタン時代に護教論として執筆された『妙貞問答』と、転じてキリスト教批判のために発表された『破堤宇子』。この両者を総合して、神・仏・儒・基の比較宗教学を史上初めて成し遂げた画期的な書として位置づける著者のオリジナルな理解には、なるほどと納得させられた。この宗教遍歴人の知と教養の魅力は、本書において存分に論じられていると思う。
ただ、ハビアンの宗教性を、現代の「スピリチュアリティ」ムーブメントと関連させて解説する筆致は少し頼りなく、これは別になくても構わないだろうと感じた。現代宗教への著者の強い関心はわかるが、ハビアンの見た世界を内側から理解するという本書の目論見を達成するためには、むしろ彼が生きた当時の文脈にこだわることが肝心だったのではないか。