本書は「ゲーデル、エッシャー、バッハ― あるいは不思議の環」の訳者でもある著者が1996年に著された「不完全性定理―数学的体系のあゆみ」(日本評論社)を文庫化したものです。文庫化に際し、改善すべき内容も気付いた範囲で修正されたそうです。 (例:円周率の桁数字において「9が10個以上続けて現れるところがあるか」という問いは、この10年で答えが得られています!)
「応用数学者が書いた超数学入門」ですので、専門外の人がつまづきやすいポイントがうまく説明されていると思いました。「形式的世界と実質的世界」「数学と超数学」「数学的体系の論理的構造」に関してうまく図解(イメージ化)して説明されているところに好感が持てました。とはいえ、最後の「不完全性定理」の説明は、まったく初めての人にはやや難しいのでは、とも思いました。(「対角線論法」や自己言及に関するパラドックスに慣れていないとチョット辛い?) そのような超初心者の方は、例えば「無限論の教室」(野矢茂樹)などの易しめの読み物でイメージを掴んでから本書に取り組まれると理解が深まるのではないかと思います。(その後、さらに興味をお持ちになられた方は、より本格的な書物(例えば「ゲーデルは何を証明したか―数学から超数学へ」(E. ナーゲル)や「ゲーデルの世界―完全性定理と不完全性定理」(広瀬 健, 横田 一正)など)に取り組まれるとよろしいのではないでしょうか)