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不均衡進化論 (筑摩選書)
 
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不均衡進化論 (筑摩選書) [単行本]

古澤 満
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

DNAが自己複製する際に見せる奇妙な不均衡。そこから生物進化の驚くべきしくみが見えてきた!  カンブリア爆発の謎から進化加速の可能性にまで迫る新理論。

内容(「BOOK」データベースより)

生物は、遺伝子に偶然生じた突然変異によって進化する。だが、突然変異の多くは有害だ。偶然にまかせていては、進化どころか絶滅してしまうのではないか?この矛盾を解く鍵は、DNAが自己複製の際に見せる奇妙な不均衡にあった―。カンブリア爆発の謎から進化加速の可能性まで、生物進化の見方を劇的に覆す画期的な新理論。

登録情報

  • 単行本: 269ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (2010/10/15)
  • ISBN-10: 4480015051
  • ISBN-13: 978-4480015051
  • 発売日: 2010/10/15
  • 商品の寸法: 18.6 x 13.2 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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生物はどのように種の保存という「保守」と進化という「革新」を両立させてきたかについて、遺伝子複製のメカニズムに潜む両義性をベースに発展させた不均衡進化論について一般読者向けに解説している。
評者は本論について特別知識があるわけでもないし、その学術的意義について何か言えるものでもない。しかし、本書は学術書ではなく一般向けで脚注もつけていないので、普通に読み進めることができ、実際、評者は楽しんで読めた。
進化論に関してはダーウィン以来さまざまな議論があり、評者の理解するところ、特にDNA発見以降は、ミクロ的遺伝子論とマクロ的集団遺伝論とをどのようにつなぐかが大きな課題だったと思われる。遺伝子論では木村資生の分子進化の中立説の貢献があり、マクロではグールド、エルドリッジの断続平衡説が大きな論争を起こした。本書で提示されている不均衡進化論はこうした伝統に立ち、ミクロとマクロの間のミッシング・リンクを埋める重要なピースとなるものと思われる。
すでに述べた通り、本書は一般向けに書かれているので、高度な知識を前提とせずに読めるように遺伝子などについての基本的な事項も分かりやすく説明されている。DNA複製自身に保守と革新の両立のメカニズムが備わっていることが本論の中心だが、納得しやすい形で書かれている。
進化論は生物学の分野を超えてさまざまな分野で比喩的にも使われているが、一部には俗流進化論として間違った使われ方もしている。これらは進化論の一部を単純化して適用することで自分に都合の良い結論を導く道具としている。本書を読むと進化論の議論の深さと多様性が分かり、このような間違った使い方に対する目を養うこともできる。エキサイティングな理論を分かりやすく解説した本書の良い副次的効果といえる。
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著者は、従来の進化理論が偶然の積み重ねと自然選択により説明し、生物側に進化の要因を求めていないことに疑問を抱いていた。これでは、カンブリア爆発の謎もうまく説明できない。
そして、ノーベル賞受賞者のアーサー・コンバーグの講演の際カラースライドが映し出され、それを見た途端ピンときた。
それは、DNAの二つの複製方法である不連続鎖(エラーが多い)が進化に備える役割りを担っているのではないかというアイデアである。
そして、もう一つの連続鎖(エラーが少ない)=半保守的複製(野生型ー両親が持っているのと全く同じ遺伝子型)と併せてこの理論のコンセプトである「元本保証された多様性の創出」を図っているのではないかということである。従来の理論には欠けていた分子構造からの解明である。

そして、進化の研究を「論」から「学」へと引き上げるため大腸菌を使った進化加速実験が行われている。
2005年には、中立進化論の研究者の中から哺乳類と鳥類は爬虫類と袂を分かってから不連続鎖にバイアスがかかった変異を多数つくり出し進化を加速してきたのではないかと考えられる事例も出て来ている。

興味ある実例を二つ。
.地中海の小島に昆虫を食べるシクラカベカナヘビというトカゲがいる。1971年に五つがいのトカゲを別の島に移し、2008年にベルギーのチームが調査したところ驚いたことにその子孫の顎が発達し、その結果頭が大きくなり盲腸弁が発達して完全に草食性のトカゲに変わってしまっていたということである。量的形質には各遺伝子間の相互作用が、形態形成(発生)においては遺伝子は初期値を与えるにすぎず、あとは自己組織的なボトムアップ型の効果が強く表れたものと考えられる。
.京大で半世紀(14000世代)に亘る暗所でのショウジョウバエの飼育実験がある。その結果、体表を覆っているニオイを感じる感覚毛が約10%伸び嗅覚が発達し雌雄のフェロモンの違いを察知して暗闇でも効率よく交配する。そして、ゲノムの約40万ヶ所に差異が見つかった。

バクテリアは何故進化しなかったのか。これが進化論に対する素朴な疑問であった。
その答えは、進化とは時間の関数ではなく生物の種類によって恐ろしく違うということである。
この考えには、人間中心主義がチラチラしている。進化機構の解明にはいくつものブレイクスルーが控えているのではないだろうか。
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DNAの複製が行われるとき、ほどけた二重螺旋の二本の鎖のうち一方(ラギング鎖)はもう一方(リーディング鎖)よりも複雑な過程を経るために変異が多く含まれてしまう。これが何度か繰り返されるために配偶子の中にはより多くの変異を含んだもの(ラギング鎖を何度も経験したもの)と、より少なく含んだもの(リーディング鎖を何度も経験したもの)と、その中間型が含まれることになる。この変異率の分散が進化に重要な役割を果たすのではないかという理論。

とても興味深いが、しかしそれほど革新的だとは確信できなかった。変異率の「分散」を変異率の「高さ」と直接結びつけている箇所が多いが、変異率は実際の生物集団を調べて平均値として得られるわけだから、不均衡モデルを採用したからといって今までの仮定より変異率が高いはずだとか、進化速度が高いはずだといえるわけではない(進化速度は選択圧にも左右されるのだし)。また変異率変動メカニズムが多くの生物にあるのではないかと考えているが、あまり望みはないように思う。細菌と異なり、繁殖サイクルが長くて産子数が少ない動物は、環境が激変したらのんびり繁殖するよりもさっさと移住するだろう。これが一部の細菌以外で変異率変動が見つかっていない適応的な理由ではないだろうか。

自説とダーウィン主義を対比させすぎているのも紛らわしい。著者の理論は自然選択がかかる「変異」がどのようにどんなパターンで生み出されるかを説明しているのだから、まさしくダーウィン主義の一種だ(p114の図なんか誤解を生むだけだとおもう)。そのうえ微妙な誤解もある。ダーウィン主義における偶然とは、「変異そのもは進化の方向性を生み出さない」くらいの弱い意味であって、全く法則性がないとか理解不可能だという強い意味はない。ダーウィン主義者は自然選択を絶対視しているとか、生物の主体性をタブー視しているとか、そういう誤解はどこから出てくるのだろう?
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