インドには不可触民と呼ばれる人間扱いされない人間の層がある。その比率は全人口の85%に及ぶ。
近年はIT革命や世界のバックオフィスなどと注目されるインドであるが、その社会を知るにはヒンドゥー教とカースト制度、そしてカースト制度により抑圧される大多数の不可触民の実態を知ることは必須である。
30年以上インドを活動の場としてる著者が社会で活躍する様々なタイプの不可触民のリーダー格の人々への取材を通して、不可触民の現状を描こうとしたものである。不可触民もインド独立後は学校や公務員の指定枠を使い次第に活躍の場を広げてきた現状を表現するには最適の題材であろう。ひたすら煮抑圧されているだけの古いイメージの不可触民でなく、自分たちで世界を切り拓く新しい不可触民の姿を描くことを主眼としているため、不可触民の抑圧の現状は後景に退いてしまった感がある。それでも不可触民たちが様々な社会制度を利用しながら少しずつ活躍の場を広げてきた過程を紹介する作業は現代人類社会において大きな意義を有することには変わりない。
インタビューを主体としているため著述に散漫な印象も否めない。話が暗黙の了解で進んでいる部分が多く、読み解くのに苦労する箇所もいくらかあった。さらにそれぞれの章ごとに違ったタイプの不可触民を取り上げているため、全体としての統一感が今ひとつ感じられないなど構成・編集上の課題が多く見受けられる。