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松浦 寿輝
5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容説明

生とは、一瞬のきらめきにすぎないのか? 「現在」が亡霊として揺らめいているだけの、時間のない世界。そこに舞い戻ったのは、咽喉元に二筋の瘢痕を持つ男。--やがて物語は、恍惚の極致に向かう

内容(「BOOK」データベースより)

生とは、一瞬のきらめきにすぎないのか?「現在」が亡霊として揺らめいているだけの、時間のない世界。そこに舞い戻ったのは、咽喉元に二筋の瘢痕を持つ男。―やがて物語は、恍惚の極致へ向かう。魂が倒錯の世界を挑発する短編連作集。

登録情報

  • 単行本: 258ページ
  • 出版社: 講談社 (2011/6/22)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062170280
  • ISBN-13: 978-4062170284
  • 発売日: 2011/6/22
  • 商品の寸法: 19.6 x 14.1 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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By Nutrocker トップ1000レビュアー
本書の主人公「平岡」は「事件」以来獄中で27年を過ごし、出獄してからは
世間を避ける老人となってひっそりと暮らしている。
有り余る資産を元に伊豆に塔を建て、あるいは自宅の地下に
不思議な彫刻群を並べて、老いの日々を過ごしている。

本書の前半では平岡は大きな行動に出ず
スコットランドに旅して当地の自然に浸ったりする
(この場面の描写は芳醇で美しい)が、後半になると
ROMSという組織に関わり、異常な事態に巻き込まれていく
(『春の雪』のパロディめいた場面には笑ってしまった)。

だが「平岡」がときに洩らす現代日本に対する批判は
それほどスケールの大きいものではなく、若干の違和感を覚えてしまった。
「平岡」をもう少し時代と対峙させ、たとえばネット社会、
アニメ・ゲーム文化の台頭など1970年の時点では想像できなかった状況を
「彼」らしい冷徹な論理性と絢爛たる皮肉で語るような描写があれば、
後半に禍々しい事件を登場させなくても、
もっと挑発的で面白くなったように思う。
「三島」の才能は「事件」の存在を抜きにしても、
充分過ぎるくらい圧倒的なものだったから。

だが、他の方のレビューにもあるように、
著者は「三島を借りてきただけ」で「老人」を主人公とした本作は
「時代との対峙」とは別のところに主眼が置かれているのでしょう。
松浦氏が本作にこめた哲学を私が把握しきれなかったのかもしれません。

前半の美しい文章には心を打たれたので、★4つの評価です。
このレビューは参考になりましたか?
6 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
後期高齢者のテロ集団、誕生秘話です(笑)
物語の進行には黒子がいて、それは若者です。
何事かやりたいんなら、爺さん操らずに自分でやんなさい、と思ったけれど、
そうか、先立つものは爺さんの方が潤沢に持ってるものね、と思い直しました。
何言ってんだか分からない? 本作を読んでください。

最後のどんでん返し(これって死語?)までは、
まったく誤解して読んでいました、私。
そうか、作者は三島由紀夫にこんな風に死んで欲しかったんだ。
あんな風じゃなく。ふーん。
でもそれにしては、生前の三島の思想を否定する老年の三島の描き方が
ちょっと純文学じゃないよなぁ。でもまあ、そういうことね。ふーん。
しかしこんな浅薄な、ふーん、のまま読み終わるわけがない。
だって作者は松浦寿輝氏だもの。

昭和45年、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で切腹したとき、介錯が下手くそで首が繋がったまま生き延びた三島が、
刑期を終え80代半ばの老人になったという設定です。
それだけでも禍々しくスキャンダルな舞台設定ですね。
世の諸々にまったく無関心、鏡の前で手品をするのが楽しみ。虚無感を空気のように呼吸して生きる老人が、自宅の地下室を人の集うカフェバー風に改造したくなる。外界との接触への欲望が目覚めてきたところで、
待ってましたとばかり登場する謎の青年。(これが黒子)
青年の手引きにより、謎の後期高齢者同好会ROMSに参加、
あれよあれよという間に中心人物になっちゃう。

タイトルをもってして、「死の果てしない遅延」(三島に死を与えられない作者)つまり不可能性としての死、
ということに言及した書評もありましたが、
そういういかにも純文学的評はこの作品にはなんだか似合わないような気がします。
だって、総じて、とても元気な作品なんですもの。
作中の平岡の手品のように、不可能というコインをひょいっと裏返したら可能が現れる、
そういう不可能ですよ、このタイトルは。

東大教授に身をやつしているけど(こういう場合、やつすとは言わないよねぇ、普通)
本当は過激な詩人、松浦寿輝氏。
世界中でデモが起きている昨今、老人たちの過激な蜂起を、三島を生き返らせて描こうとしたのかしらん。
いいなぁ、こういうの。俄然、元気出てきちゃう。
老年は善悪の彼岸に佇んで、過激にいかなくちゃ!
このレビューは参考になりましたか?
7 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 本書の著者は、四方田犬彦『ハイスクール1968』2004
でねじめ正一などと共に「真に詩人としてアイデンティティ
を確立」した者として紹介されていた人です。その人らし
い異様な悪徳小説と、まずは言っておきましょう。
 前半での自宅やスコットランドでの主人公の過ごし方
には自意識過剰気味ではあるものの、とりあえずはごく
普通の老いの姿が描かれています。ところが、ROMS
というクラブに主人公が出入りするようになるあたりから
転調し始め、最終章で一気にヒートアップします。
 鬼面人を威すが如き結末には、主人公のモデルと思し
き三島由紀夫への著者の思いと国境を軽々と超える姿
には自身の老後への願いが込められているように思いま
した。
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