不動産の金融商品化の勢いは止まることを知らず、不動産は、目で見て、触ることができ、動かせないという従来の不動産とは異なる、見えない、触れない、動く金融商品へと変貌を遂げています。こうした状況において不動産ビジネスも大きく変転しています。不動産ビジネスに関わる者は、好むと好まざるとに拘わらず、あるいは気づかないまま、こうした大きなパラダイム変換の渦に巻き込まれているのです。これまで実務の世界では不動産に対する評価は多分に経験と勘に依存してきました。しかし旧来の考え方では、こうした時代へ対応することは困難だといわざるを得ません。
本書は、不動産評価をはじめ、新商品の開発、価格や契約の決定など、不動産をめぐるさまざまな意思決定の場面において、ファイナンス(≒金融工学)という手法を用いて、それらの問題解決に挑むための考え方を解説しています。ファイナンスを問題解決のためのツールと位置づけ、不動産ビジネスにおけるビジネスツールとしての使いこなし方を提案しています。
不動産金融工学に関する書籍は既にいくつか出版されていますが、本書には、次のような特徴があります。
第一に、数式の使用を極力抑えた記述を心がけ、図表での直感的な説明を盛り込む等類書に比べ相当程度読みやすいものとなっています。
第二に、不動産金融工学に関する実務に即した書籍の多くは翻訳本が多く、必ずしも我が国の実情に即した内容のものとなっていないのに比べ、本書は、我が国の法制度や商慣習を踏まえつつも、ジャパン・ローカルに陥ることなくグローバルスタンダードな視点で日本の不動産を巡る環境を解説しています。
第三に、我が国の不動産金融工学に関する著作は学術サイドからのものが多いのに対し、本書は、そういった敷居の高いアカデミックな理論と実務との橋渡しとなるような内容になっています。単なるファイナンス理論の解説ではなく応用に力点を置き多くの問題解決の提案を行い、不動産ファイナンス分野の全貌を鳥瞰します。実務者や初学者が誤解したり悩むところを熟知した筆者がポイントを突いて展開します。このとき理論の展開だけでなく必ず実証データや活用方法まで説明することを心がけています。
コラム等、エッセー風読み物としての面白さと、それでいて学術書レベルの高度な内容を併せ持った、不動産金融工学の平易な入門書として、不動産と金融のビジネスに関わる者、関わろうとする者、法と会計、建築士、アナリストなど周辺の専門家、政策や行政担当者、さらには、学部レベルからビジネススクールにおいて不動産ファイナンスを学ぶ学生諸氏等、幅広い読者に受け入れられるものとなっています。
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