本書は、安易な不動産購入に対して警鐘をならすものです。人口減少やグローバル化といった経済・社会環境の変化を受け、不動産市場は大きな変貌を遂げ始めていることを、様々なデータを用いて指摘します(例えば、空室率の上昇、住宅着工戸数の減少、テナント料の低下など)。そして、リーマンショック以降停滞している住宅市場が今後「もとに戻ることはない」と結論づけます。データに基づいて論理的に説明していくので、その結論には一定の説得力があります。
一方で、「では個人はどうすればよいのか」という点については、正直若干議論が浅いと感じました。著者は、住宅価格の上昇が見込めない中では安易に住宅を購入すべきでないとリスクの面は強調するものの、「では実際に住宅を購入したい人が何に気を付ければよいのか」という処方箋は提示していません。本の表題を見て個人レベルの処方箋を期待した人にとっては、ちょっと物足りない内容と言えるでしょう。
総合的にみれば、住宅市場を取り巻く環境をマクロの視点からざっくりと知りたい方にとっては有益な本だと思います。