小川一水がずっと抱えている二つの欠点の内、一つがある程度改善されている一方、もう片方はむしろ悪化しています。
改善点は、毎回出てくる物語上不要・又は描き損なって「居ない方がマシ」になっている美少女キャラ。今回は、ある程度きちんとした書き込みがなされ、物語の主軸と個人的な問題がそれなりに連携していて、かなり良くなっています。相変わらず薄いと言えば薄いですが、彼女が余り前面に出ても仕方がない話なので気になりません。
逆に、彼女の母親については、動かし方次第でかなり面白いコマになったのではないかと、勿体なく感じました。(つまり、出番が少ないのに・少ないだけに?魅力的なのです)
ただ、もう片方。性善説的な世界観による、考証を放棄するような終盤の展開は相変わらず。特に、失敗国家として名高い某国を改善していく過程は、政治的にも技術的にも突っ込みどころが多すぎて見ていられません。
この部分は、生産性の向上が世界を幸せにするかと言う議論、及び理念的には必ずしも対立しないライバルとの相克、それにVMマシン軍事利用の可能性などのメインテーマが重なっています。にもかかわらず、どれも明確な回答を出さないまま、既成事実のようにシナリオがハッピーエンドへ向けて展開するため、説得力が著しく不足しています。
人間性を最小限に抑えた「老ヴォールの惑星」が名作だった事を考えると、決して作者の力量が不足しているわけではありません。ただ、キャラクターの呪縛から逃れられないライトノベルのフォーマットとは、やはり合わない人なのではないかとの感を強くしました。