人間同士、比べるっていうことは、なかなか辞められないもんです。
私は、地方に住んでいますので、この小説に出てくるような華やかなヒルズ族やシロガネーゼには縁遠いですが、
やはり、田舎には田舎の、「仲間分け」があります。
やれあそこの家の子は○○大学に行った、あの子は○○に勤めている。あの人はすごい額の年金をもらっている。
狭い世界で、比べあって自分の地位や幸せを確認する。
自分の現状のステータスや仕事に満足しておらず、その不満や妬みを子供への期待に変えて、
子供の自由の芽をつみとってしまう大人たちは、どこにでも存在します。
ある人に勝てば、それが当たり前になって、また上を意識する。上には上があって、「比べる」という行為には、
天井がありません。奮起のきっかけになりこそすれ、比べ続ける人生なんて、とてもくだらない、苦しいことだと思います。
この小説には、比べられ、比べてきた、さまざまなステータスの人が面白おかしく、そしてリアルに書かれています。
等身大の格差社会が、本当に具体的に、細かく取材され書かれていると思います。
ただ、それだけではありません。
ちゃんと、自分のためにする、自分を諦めない、努力の大切さを書いています。人に勝ちたいというレベルよりはるかに高次の、
自分との戦いに勝つことが、人生の勝者であると、物語全体ひっくるめて、強烈なアイロニーを込めて語っている。
作者は、もちろん判断を読者にゆだねています。人の数だけ解釈があっていいと思いますが、
私は比べあっている人たちが、すべて狭い箱庭の中の住人の寸劇のように見えました。
自分との戦いに勝った人だけが、そんな寸劇からは抜け出せるのです。
格差なんかに惑わされない、本当の幸せや強さは、比べて得る相対的幸福より、自分だけで心から感じる絶対的幸福だと思います。
いろいろと考えさせられた、現代をうまく書いたとても面白い小説でした。