下巻では、波切八郎・秋山小兵衛のほかにもうひとり、岡本弥助という
剣客にスポットが当たる。八郎とも小兵衛とも全く違う生い立ち、人生
を歩んできた岡本。上巻では波切を助けもした、人間味あふれる彼だが、
これまでの因果を抜けられずにある暗殺に関わっていく。これに無縁で
はいられない八郎。もし、岡本と八郎が再会を果たしていなければ。
岡本がこの暗殺から逃れることが出来ていれば。公儀隠密の行動が一日
早ければ。小兵衛があのとき気まぐれをおこさなければ。
『もしあの時』と何度も思わずにはいられない。
(そうであればそれぞれの剣客の行く末は、もっと違ったものになって
いたに違いない)
まさにこのことである。
ラストの情景には思わず感嘆した。さすがは池波正太郎である。