本書を読んで最初に感じたのは、本書の根底に流れるものは、著者が15年前に著した「生きるヒント」と同様の、「一見すると逆説的であるが、実は紛れもない真理」である。「生きるヒント」の中の一節、「モノだけ豊かな冷たい家庭に育つよりも、物質的な豊かさは今ひとつでも、家族ぜんぶが楽しく、和やかに、笑いながら毎日を送っているような家庭のほうが「幸福」だという立場も成り立つのです」は、戦後、計算可能な経済的効率だけを優先し、不確かなものの大きさ恐ろしさを無視してきたと説く本書の主張と合致する。
著者は現在おかれている日本の状況を、第二の敗戦と呼ぶ。国対国の戦争ではない、別の戦いに敗れようとしているのではないかと。
太平洋戦争の時、国民はこの戦争は負けると薄々感じていた。この国はこのままでは破産するのではないかと今の国民は思っているが、国民はそれを見て見ぬふりをしている。著者は、この第二の敗戦を迎えた後、国民はどうするべきかという命題に一つのわかりやすい模索を明示している。一旦は頂点を昇りつめた国の「下山」の仕方である。もう一度、経済的効率を求める国にするのか、自然の大きさに畏怖し心のあり方をもう一度問い直す国にするのか、それはこれからの国民にかかっている。
ここまでは星5つであるが、後半の「ノスタルジーのすすめ」が、おそらくは本書の構想以前に草稿されたものであろう、本書の趣旨とは全く沿わない。従って最終的に星3つである。