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上野千鶴子が文学を社会学する (朝日文庫)
 
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上野千鶴子が文学を社会学する (朝日文庫) [文庫]

上野 千鶴子
5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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1992年に刊行された、著者と小倉千加子、富岡多惠子との鼎談(ていだん)『男流文学論』は、男性作家の作品が内包する性差別を暴きだし、文壇に賛否両論の渦を巻き起こした。本書は、明治期からの文体の変遷をジェンダーという視点からたどる「ことば」の章、有吉佐和子『恍惚の人』と佐江衆一『黄落』の2の老人介護をテーマとした作品から「介護をめぐるジェンダー規範」をあぶり出す「おい」の章、そして、『男流文学論』での発言を深化させ、江藤淳の『成熟と喪失』を軸に整理した「おんな」の章など、フェミニズムの旗手といわれる著者が再び文学に目を向けた評論集である。

印象深いところは、尾崎放哉の俳句に「表現に見離され、失語に陥りかけていた」ところを救われたと吐露し、また、歌人岡井隆の「男歌」に魅了されたと語る「うた」の章において、社会学者やフェミニストという立場を越えた、「文学」あるいは「言葉」と対峙する個人としての著者が立ちあらわれている点である。作家作品主義に阻まれた既存の文学評論や、男性中心社会を敵視する旧来のフェミニズム批評からも飛翔した本書は、『成熟と喪失』が著者の言うように「同時代の文学を論じて時代と社会の深みにとどく文明批評」であるのと同じ意味で、優れた文芸時評として成立している。

『男流文学論』は、著者が語るように「フェミニズム批評が『文壇』という池に投げた石」であった。本書はひとりの人間として上野千鶴子が文壇に投じた一石である。(中島正敏) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

あの『男流文学論』で文壇に賛否両論の渦を巻き起こした著者が、再び文学に目を向けた文芸評論集。明治期からの文体の変遷をたどる「ことば」の章、『恍惚の人』と『黄落』から、老人介護文学の中の性差を追究した「おい」の章など、『男流文学論』のその後も加えた、刺激的な文学論。

登録情報

  • 文庫: 295ページ
  • 出版社: 朝日新聞社 (2003/11)
  • ISBN-10: 4022643196
  • ISBN-13: 978-4022643193
  • 発売日: 2003/11
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.4 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.3  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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32 人中、28人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 「女装した家父長制」, 2004/2/5
レビュー対象商品: 上野千鶴子が文学を社会学する (朝日文庫) (文庫)
本書のなかでとくに好きな論文がある。「女装した家父長制」というやつだ。
このなかで上野は、「日本の母」という役割規範が言説のなかで構成される「仮構」であることを確認したうえで、それを具体的に論証してゆく。

文学/文芸批評が、正統な存在としての「日本の母」とその消滅を語るとき、それらは、消滅した存在の正統性とともに、この二項区分の「土俵」である隠蔽された家父長制をも承認している。この隠された家父長制が「女装した家父長制」である。

「恥ずかしい夫」「自己犠牲する母」「情けない息子」「不機嫌な娘」という産業資本主義下の近代家族的配置のなかで、母は不在の夫になりかわって(正確にはその意図を実行するだけだが)息子のパーソナリティ形成過程に介入する。こうした家父長制を文学/文芸評論は前提しているのだ。

そして精神分析と日本文化論のミクスチャーが、普遍理論の装いのもとでこの配置を保障する。

かくして、文学/文芸批評と精神分析がひらく言説空間のなかで「日本の母」は(その消滅を宣告されつつ)仮構される。

上野の手際はすばらしくあざやかで爽快だ。そして、最後のほうにでてくる

「母親業の放棄?父親業をとっくに放棄したオトコに、そんなことをいう資格はない。倫理?そんなものは犬にでも喰わせろ。」
みたいな啖呵(うろ覚えだけど)を読んでスカッとするのは私だけではあるまい。
数十ページの論文でこれだけのことができる。以前単行本で読んで感動したのを思い出した。

こんな論文が入っている本が文庫で手軽に読めるなんて、しあわせだと思いませんか?

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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 オーソドックスな日本版フェミニズム文学批評, 2010/4/14
By 
倒錯委員長 "今田祐介" (横浜市と夢半ば) - レビューをすべて見る
(トップ500レビュアー)   
レビュー対象商品: 上野千鶴子が文学を社会学する (朝日文庫) (文庫)
この本は富岡多恵子、小倉千加子との鼎談『男流文学論』を著した
後の上野が、「社会学者として」文学を批評したという評論集だ。

近代の名の下に女たちに押しつけられてきたのは、「男の論理」だ。
その押しつけは、時に見えないか「言葉」の形をとり、時に老人介護
という「家族」の形をとりというように、さまざまな形態を取ってきた。
本書がまず射貫くのは、そんな「男の論理」とその進入経路だ。その
一方で小島信夫『抱擁家族』を象徴に、日本の男たちの夢の「母性
愛」から女たちが急速に離脱し始めていく潮流をいち早く見抜いた江
藤淳の、あくまで中期までの仕事に一定の評価を与える。

ここまで読めばわかると思うが、この本は意外とオーソドックスなフェ
ミニズム文学批評である。上野がやること以外に別にとりたてて目新
しことはないはずだが、そこは著者のネームバリューとそれを有効活
用してタイトルとして具現化した編集者の勝ちになるのだろうか。

文学はこれまで、あくまで「男の文学」であったということ。上野が活
写するのはそこである。その「男の文学」の担い手らが描く<女>と
は畢竟、「男にとっての女」という<他者>になる。フェミズムが目指
したのは、男に従属する女たちの「地位向上」ではない。その「向上」
自体に、「男の論理」の側の優位性を認識が込められているのだから。
そうではなくて、女の解放なのだ。そこで男に求められるのは「女の帝
国」構築を指をくわえて見ていること、ではなく、<他者>として恐れ
また嫌悪してきた彼女たちとの新しい関係構築、そしてその関係を受
け入れる自己の変容だ。

「うた」の章からは、社会学やフェミニズムからは若干離れて、おもに
上野が他の作家の著作集や文庫版に解説として寄せた文章を集め
ている。最後の高橋源一郎による解説、制度としての文学と文壇に
ついて書いた上野のあとがきに呼応する彼のデビュー当時の文壇に
“就職”したエピソードは痛快だ。
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21 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 切れ味鋭いナイフの評論!, 2005/4/6
レビュー対象商品: 上野千鶴子が文学を社会学する (朝日文庫) (文庫)
元文学部としては、大学の授業では、「作品主義」をとる助教授の授業に、

「それだけでいいのかなぁ~?」

と疑問に思っていたので、かなり面白く読めました。

※「作品主義」→大雑把に言うと、純粋に作品のみとりあげ、そのなかで解釈していきます。

私の考えでは、良い作品と言うのは、「才能」だけでなく、「時代性」も
必要なわけで、「時代性」を持っている作品を取り上げ、
社会学的に整理していくのは、別におかしなことではないと思うのです。

圧倒的に面白かったのは、「おんな」の項です。
特に、「女装した家父長制――日本の母の崩壊の章」はとりわけ面白かった。
「連合赤軍とフェミニズムの章」も一切、全共闘時代を知らない私が読んで面白く、
「連合赤軍事件」「永田洋子」を検索し、その記事を全部読んでしまうほど面白かった。

彼女の、文壇に賛否両論を巻き起こしたという、「男流文学論」も読んでみたくなりました。

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