放射線検出器の購入者が測定値をネットで公開し、一部でホットスポット等と言われています。ですが、大抵の場合は測定機や測定方法の問題です。特にガイガーカウンタを用いた測定は誤差が多く含まれ、値が二倍や三倍やそれ以上になってもおかしくありません。国や自治体が測定する場合はエネルギー補償回路のあるシンチレーション式の線量計を用います。
ガイガーカウンタには、安価(今はそうと言えないが)、扱いやすい、ベータ線も同時に検出する、という利点もあります。身近に放射性物質の付着したものがないか「検出する」目的には十分と思います。ただし、放射線量を「計測する」には向きません。
ガイガー=ミュラー(G-M)管が何をしているかというと、入射した放射線のうちG-M管が反応したものを数えます。計数値の単位は cpm (Counts Per Minute)または cps (Counts Per Second)で、分または秒当りの数です。それを標準線源からの線量と比較して定数を決め、線量等量(μSv/h)等の値を表示します。
表示線量(μSv/h) = 定数 × 計数値(cpm)
この定数の逆数を感度と言い大抵仕様に書かれています。単位は cpm/(μSv/h)、 cps/(μSv/h) 等です。ポケットに入る装置に使われる中では最大と思われるSBM20-1(СБМ20-1)の感度の公表値はCo-60のガンマ線に対して 132cpm/(μSv/h) です。ただし、シンチレータ結晶の感度はその一桁から二桁上です。なお、SBM20-1 の消費者向け価格は 30-40 ドルです。
標準線源にはC0-60(ガンマ線のエネルギーが 1.17MeV と 1.33MeV)や Cs-137 (0.662MeV)などが使われます。同じ数のガンマ線でもエネルギーにより線量は変わります。照射線量の(旧)単位はレントゲン(R)で 1cc の空気の中の気体分子が 1esu (Electrostatic Unit)電離されたときを1Rとします。新単位はC/kgですが、あまり使われません。
照射線量を正確に計るには電離箱が使われます。箱の中に電極が二つあり弱い電場を掛けておき、電離した電荷を集めます。それをフェムト(10のマイナス15乗)アンペアを測定できる高精度の電流計で測定します。念のために書いておきますが、Civil Defense の中古品が売りに出されていますが、動作するものは稀と思います。微小電流計は湿気に弱いのです。
電離箱の電極の間に掛ける電場をうんと強くしたらどうなるか。それがG-M管です。電離した電子は加速され他の分子を電離させます。これを電子雪崩と言います。管自体がアンプの役目をするので簡単に検出できます。ただし、元の放射線のエネルギーの情報は失われます。ですので、電流を計らずパルスの数を数えます。
G-M管は放射線の数だけを計りエネルギーを見ていません。また、検出効率もエネルギーにより変わります。照射線量も検出効率も高エネルギーのガンマ線ほど高くなりますが、差し引きゼロにはなりません。これをエネルギー依存性と言います。エネルギーが低いほど感度が高くなります。高級なG-M管は鉛や錫で覆って低エネルギーのガンマ線の入射を減らし、エネルギー依存性をある程度補償しています。俗にエネルギー補償型G-M管などと言います。
G-M管の場合、ガンマ線の検出効率は数%かそれ以下ですが、ベータ線はほぼ100%です。一個のベータ線粒子が50から200個程度のガンマ線に相当します。ですので、ベータ線の遮蔽が十分でないと何を計っているのか分からない状態になります。また、C-M管のガンマ線の検出効率は方向依存性があり、円筒の半径(r)方向から入射する場合は軸(z)方向の1.5倍程になります。ガンマ線が陰極に吸収され二次電子が発生するからです。
また、G-M管には(シンチレーション検出器にも)固有バックグラウンドがあります。厚い鉛板などで囲って宇宙線や他の物質に微量含まれる放射性物質からの放射線を遮蔽しても、装置が自ら発する放射線などによる計数値です。電極やガラスの中に放射性の原子が微量ですが含まれています。固有バックグラウンドの影響は、G-M 管 SBM21 の場合 0.79μSv/h 程度、G-M 管 SBM20-1 の場合 0.45μSv/h 程度です。もちろんデータの処理の段階でバックグラウンドを除去するのが普通ですが、本来の信号がバックグラウンドより小さすぎると測定値の信頼性が下がります。
つまり、エネルギー依存性、方向依存性、ベータ線の誤検出、固有バックグラウンドなどの問題があり、ガイガーカウンタは線量の絶対値の測定には適しません。放射線の検出器、いわばガス検知器のようなものと考えるべきです。
ガイガーカウンタで食品や飲料水を計ろうという人はいないと思いますが、そういう用途には大型の NaI(Tl) シンチレータを使ったシンチレーション式の線量計を使います。さらに正確に計るなら質量分析です。厚生労働省の「緊急時における食品の放射能測定マニュアル」がネットにあります。
念のために書いておきますが、一口にシンチレーション式と言っても、シンチレータ結晶の種類や大きさ、光電子倍増管かフォトダイオードか、エネルギー補償回路の有無で価格はピンからキリまであります。
日本製のエネルギー補償型のシンチレータ式サーベイメータは、小型の CsI(Tl) 結晶とフォトダイオードならY140,000弱からあります。エネルギー補償回路がなければさらに安くなります。一般の人が線量計を必要とするかという疑問は大いにありますが、それでも必要と考える人がいて、ある程度の値の信頼性を求め、使い捨てとは考えないのであれば、日本製の機器を正規代理店あるいは正規代理店が紹介する小売店から購入するのが良いと思います。