上橋菜穂子さんの『精霊の守り人』に始まる「守り人シリーズ」は、児童書としての大きな版型(重さは軽い)、この軽装版(版型そのものが小さくソフトカバー)、そして新潮文庫版がでている。作者曰く、それぞれ想定される読者の年齢に合わせて漢字の量が異なることの他に、内容には手を加えていないそうだ。
2009年5月の時点では、文庫版が第4巻の『虚空の旅人』までしか刊行されておらず、文庫になって初めてこの作品に出会えた評者は、続きが読みたいが、こども向けに漢字の少ない版は読みにくいのではないかとためらっていた。が、文庫化を待てずに手にした軽装版は、危惧していたほど漢字の少なさは気にならず、作品の面白さを損なうことはなかった。内容は同じなのだから、当然ではあるが。
また、文庫版は地図を除く挿絵が省略されているので、軽装版で初めて挿絵を見たが、自分の頭の中で描いていた人物像とは少しギャップがあったものの、広大な風景描写は素晴らしく、楽しめるものだった。
その他、軽装版には作者の後書きとしての創作秘話が加筆されている。オープンでありながら底を見せることのない上橋菜穂子という作者の、創作の源の一端を知ることができるという点で興味深い読み物だ。作品を壊さない慎みのある後書きなので、安心してページを繰ることができた。
もし、大人の読者で文庫化を待てない方がおられたら、この軽装版は以上の点でおススメできると思う。
ところで、軽装版も既にシリーズ10冊分が刊行されており、個別に買ってもいいだろう。セット販売にレヴューを書いたのは、私のように「軽装版」を選んで大丈夫?と思っている人への参考になれば、という程度で、必ずしもセット販売の利点をレヴューするものではない。ただ、実際に軽装版を手にしていい選択肢だなと思ったので、こちらにレヴューさせてもらった。