お父ちゃん(十三代目仁左衛門)が大好きという、松嶋屋の次男というよりは大松嶋の大ファンとして歌舞伎俳優をされてきたとも言える秀太郎さんが、本当に率直な気持ちを述べているスイートな本です。松嶋屋の歴史も、戦後の関西歌舞伎も含め、人生経験は、かなりビターなのに、養子の愛之助や松竹上方歌舞伎塾生に託す芸の継承について語る部分のすがすがしいこと。
小春や梅川といった役の話をする部分は芸談でもあるのですが、若い役はお客さんにお婆ちゃんが演ってると思われる前に引退します等、ご自身の芸や年齢や歌舞伎界における立ち位置にかんして、恐ろしいくらい第三者的な視点をお持ちなのには驚きます。松竹上方歌舞伎塾で教鞭を取る姿をドキュメントで拝見したことがありますが、演出家としても成功されていたに違いないと改めて感じました。控え目で、本当に女形的な考えでいらっしゃるのが伝わってくる文章です。
秀太郎さんの本ではありますが、お父ちゃんが後輩俳優が先に菅丞相を演じる舞台で共演を重ね、満を持して菅丞相の役を演じて今ではその三男・十五代目仁左衛門以外に演じる者が見当たらないような役になったというあたりが松嶋屋贔屓にはたまらないところだと思います。