ジャケットが土門拳の「江東のこども 紙芝居 1953」である事や
メンバーの写真が彼らの幼年時代のものである事が示すのは、
原点回帰である。
原点からスタートする本作は、それまでの半生を回顧するように進んでゆき、
走り出した21世紀に乗って20世紀に別れを告げるところで終わる。
彼らは本作で自分達のスタイルを再確認し、
そのスタイルを携えて長い21世紀の旅に出る覚悟がついたという事なのだろう。
上々颱風の音楽は、
「不特定多数の個人」に対しての音楽ではなく、
「大衆」に向けての音楽である。
それも、ふと見つけた飛び出た鼻毛を一生懸命抜きとろうとするような、
そういう油断した姿の想像できる「愛すべき大衆」である。
こういう音楽が作れるのは、彼らに何の衒(てら)うところなく、
そして彼らもまた愛すべき大衆の「一部」である事を
ライブ活動で体得してきたからだろう。
研ぎ澄まされた緊張感のある音楽ももちろんいいけれど、
こういう音楽に救われる部分はやっぱりたくさんある。