現実にあった事件をもとに書いた短編小説の数々ですが、どれも読んでいると、本当にそのへんのアパートの部屋や家のなかで、起きていそうな気がしてきて、ゾクリとしてしまいます。同じ殺人事件でも、三面記事というのは、私たちの生活により近いのだとあらためて実感させられます。少しずつ追い詰められていく心理も、神奈川県の海水浴場の地方的な雰囲気など、ヒシヒシと伝わってきて読みごたえがありました。どうしてここまで書けるの、と感動ものです。
マイナス1にしてしまったのは、「愛の巣」と「永遠の花園」という作品で、事件後に家族が、そして当事者が、何事もなかったかのように過ごしていることに違和感をおぼえてしまったからです。それと、ほかの作品で、ちょっと説明的すぎるかなと思ったところが……って、厳しすぎるかな。角田さんだからハードルを上げてしまっているのかもしれません。