「バイオハザード」の監督が手掛けた見るからにCX満載でゲーム感覚な「三銃士」が公開されているようだ。
今や、「忠臣蔵」なみに、忘れた頃に映画化されるアレクサンドル・デュマ原作による「三銃士」だが、やはり、我々の世代にとっては、74年製作のリチャード・レスター版だよなぁ。
この映画、俳優陣が豪華で、オリバー・リード、マイケル・ヨーク、チャールトン・ヘストン、フェイ・ダナウェイ、リチャード・チェンバレン、ラクエル・ウエルチ、ジェラルディン・チャップリン、クリストファー・リー、ジャン・ピエール・カッセルと並べていくと、これはもう米英仏3ヶ国によるオールスター・キャストと言って良い壮観さ。
レスター作品で、オールスター・キャスト作と言えば、これ以外では「スーパーマン2・冒険篇」くらいだからね、やっぱりこれは中々のビッグ・バシェット作品であったと思う。
この両作には共通点があって、製作者がアレクサンダー・サルキルドとその息子イリアである事。
彼らは当初「三銃士」の配役に、なんと当時解散していたビートルズの面々をキャスティングしようとしていた!(笑)。
さすがにその案はぬべもなく頓挫するも、ビートルズ映画絡みでレスターにお呼びが掛ったらしい。
でも、今作と続編の「四銃士」で、その手腕に惚れこんだこの親子プロデューサーが、その後、文字通りの超大作「スーパーマン」のプロジェクトにレスターを招聘した事になるんだな。
早撮りで有名なレスターは、膨れ上がる製作費を緩和する為、当初の3時間半の長編コスチューム活劇を2本の映画に分ける事を提案、サルキンド親子は、興行主と映画会社、俳優たちには一切秘密で製作を推し進め、結果的に製作費を2割ほど切り詰めたと言う。だから、後編にあたる「四銃士」の方が、よりスペクタクルでアクション・シーンが多いのは、当初は1本の映画の中でのクライマックス・シーンとして盛り込まれる予定だったからと推測する。
レスター映画の特徴って、グラフィックでポップな映像処理と独特のユーモア感覚、それにレスター的アクションとも言うべき、スラップスティックな動きと人間凝視から来るハイパー・リアリズムの可笑しさが挙げられるんだけど、今作では、特にコメディ作家としての彼の個性が存分に味わえると思う。
個人的な思い出として言わしてもらうと、今作で、“スラップスティック”の何たるかを教えて貰った。
人間が飛んだり、跳ねたり、飛び上がったり、躓いたり、転げ落ちる、ドタバタとした動きがこれでもかとばかりに繰り返される事のナンセンスさ。
正直、しつこいな、くどいな、バカバカしいな、と思いながらも、またやってるやってるとの“オトボケ感”がクセになるのだ。
全編不真面目な感がする今作だが、レスターは、実は、衣装や美術、風俗や慣習などの時代考証に凄く拘っていたと言う。
劇中テニスに興じる王宮の人々が出てくるが、実際17世紀のフランスでは、テニスが大流行していたらしいし、また、映画の見処のひとつでもある剣術についても、今のフェイシングのルーツとは思えないような野性的なスタイルだ。
俳優たちはみな、スタントを極力使わず熱演しているが、あれだけ剣を振り回していた処を見ると、かなり生傷が絶えなかったんじゃないかと心配になるくらい迫力があった。
オリバー・リードなんか獰猛そのもので剣をブン回し、さぞ相手役は怖かったんじゃないかな。
リードと言えば、これは余談だが、彼は実際に演じたアトス役そのままの大酒飲みで剣の使い手だったらしいが、ある時、当時の盟友であったイギリスの鬼才ケン・ラッセル監督と酒の席で口論となり、文字通り、剣でケンに斬りかかって逆に大怪我をしたとの武勇伝があったような。
主演のマイケル・ヨークって、オックスフォード大学卒のシェークスピア俳優として毛並みはバツグンなんだけど、顔が爬虫類っぽくて(失礼)好きになれなかったのだが、今作のヨークは良かった。
映画が終わり、続編である「四銃士」の予告篇たる前宣伝が流れた後のエンド・ロール。真紅色のバックにスタップ、キャストの文字が流れるシンプルなものだけど、何か新鮮。そういえば、キューブリックの「時計じかけのオレンジ」のそれは、紺青に白文字、「雨に唄えば」だったよなぁと思い出す。撮影にデビッド・ワトキン、音楽ミシェル・ルグランの名前あり(おおっ!)。
正直もともと画質的にクオリティが高かったDVD版と相違があまり感じられないBD版だが、廉価化でお値打ち価格だけに、「四銃士」と併せて御覧頂ければ。
モチロン、その際には、2作を連続鑑賞し、真の意味の1本の作品としての評価を各自考えられるのも一興だと思う。