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それぞれに主人公を配するが、その各人が関連を持っている。
ハードボイルド性にはややかけるかもしれないが、各国の野球事情がよくかけており、面白い。特に日本のチームについては、明らかに実在する球団・選手をモデルとしており、その点でも楽しめる。
私のような「野球好き+ミステリー好き」にとっては、それなりに楽しめるが、作者の作品としては、所謂「船戸節」がマイルドである分、特に野球に興味がない人間にとってはつまらないかもしれない。
船戸与一の新境地と言っていいのだろうか?世界中の動乱地帯、辺境地帯を舞台に血なまぐさい冒険小説を多く書いてきた著者が一転、東アジアの野球界をテーマにした。スポーツを題材に挙げたとはいえ、さわやかなスポーツマンシップとは無縁。読者の心をざわつかせ、締め付けられるような緊張感のある展開、男の情念、欲、非情さ・・・。著者らしいストーリーが展開する。
野球賭博、日本の球界を引退したが韓国プロ野球でリバイバルした投手、引退後メキシカンリーグ、中国と渡り歩き台湾のチームのヘッドコーチを務める男、台湾出身の新人投手、スカウト歴40年の男・・・。
三国のプロ野球界が直面する問題点についても厳しく描かれる。米大リーグへの人材流出による空洞化と人気凋落、逆指名制度、FA制度の導入による一部有力球団の人材寡占化と拝金主義・・・。選手たちにたかる人々、金、女、一度はまれば身をくずすような奈落が見え隠れする世界。
もちろん船戸与一のこと、単なる野球小説で終わるわけもなく(とは言っても全く異なるストーリーに発展するわけでもないが)、韓国で1980年に発生した内戦「光州事件」や、台湾の政治の暗闘、中国マフィア、公安局、犯罪に手を染める華僑組織など見え隠れする。
短編集ということで、全体を貫く滔々としたストーリーがあるわけではないが、実力主義の世界とはいえキレイ事で終わらない世界の断面を切り取った各編は読ませる。
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