良く比較される「中島飛行機エンジン史」と比較すると、直接設計に関わった人間が書いていないので、技術的な話が少なく、また分量的にも値段の割には少ないかなという感覚をもってしまうので、満足度という面では今一つだが、その分平易で読みやすく、また三菱が航空エンジンを手掛け始めた草創期から終戦までを時系列に沿って書かれているので、通史として読むには分かりやすい。また、それぞれのエンジンの開発経緯、特徴、生産、配備までを簡潔に記述されているから、大戦中の航空エンジン史に興味のある初心者にはもってこいの内容だと思う。ほとんどすべてのエンジンの要目表もあるし、内容もメーカーから提供されたものだから正確で詳細。それ以上に注目すべき部分は、巻末に記載された年度ごとの各エンジンの受注高で、三菱が昭和7年以降に生産した全てのエンジンの出荷台数と値段が記載されていて非常に資料的価値は高い。個人的には三菱が水冷エンジンを諦めたところから空冷エンジンを開発の主軸に置くくだりがよく理解できたので読んで良かったと思う。