『三河物語』を全く知らず、ただ安彦氏の漫画ということでこの本を手にとった。正直言って、映画のシーンをコマ割りしたような安彦氏特有の劇的な画面構成や演出を期待して見ると少々ズレを感じるだろう。中盤までは原著を比較的中実に守っているのか何か抑揚に欠ける印象を持つ。後半は現代のテイストを強く感じるため、少しどこからどこまでが原作に忠実なのか悩んだが、読後主人公と殿様の人生に感じ入る自分がいた。「良い話だ」と、つまりはぐぐっとくるのだ。あとがきを読めば、どうやら安彦氏、かなり自分なりに調べ追求し、後半自信を持って描いているようだ。どうりで無理な演出によって後味が悪くならない訳だ。そしてその解釈の持つ様々な裏付けが後半のノリに乗ったオリジナル解釈に信憑性を持たせる。結果どう考えてもこの三河物語が、深い誕生秘話を持っているように思えて成らない物語として心に残るのである。『三河物語』が新しい作品を生み出している。あとがきも是非読んでいただきたい作品だ。