著者はこの作品について、「夫と姑にいじめられて、怯え、泣いていた一人の女性・・・彼女は強い自分を取り戻すように成長していく」と書いています。
確かに、平凡な主婦と言うより悲惨な生活を強いられている一人の女性の自立への道筋を、いつもの片山兄妹とホームズを絡めて描いていると言えます。
ただ、その切っ掛けが、ありうるかも知れませんが、もう一つ説得性が感じられません。
ある事件への遭遇が切っ掛けかと言うと、ちょっと首を傾げたくなります。
それはその事件と夫婦の間に関係がないからです。
では、職場の主任に自分の家族のことを話したからか?
確かに、話すことで心が解放された可能性はありますが、結婚前の心情に戻れるかと言えば、ちょっと疑問です。
でも、赤川次郎の作品は、それで良いのだと思います。
読者も彼の作品にそれ程の論理性を求めていないと思います。
むしろ、そこに描かれた人間たちの「人情話」で、心が癒されることを望んでいるのだと思います。
そうであれば、十分な作品になっていると思います。