1940年代末から50年代にかけて、ラジオやテレビなどのメディアの発達と歩調を合わせて大衆文化を創り上げたアーティストでありプロデューサーである三木鶏郎の冗談音楽、コミック歌謡集・・・というのが定番の口説か。
でも、日本で初めてCMソングを作った文字通りのクリエイターでもあり、また世相風刺で後に番組打ち切りの憂き目にもあったジャーナリスト的な部分もあり、なんとも一言ではくくれない不思議な人だ。
その三木鶏郎の音楽的エッセンスの一つが本作品で、「僕は特急の機関士で」「毒消しゃいらんかね」「田舎のバス」あたりは本作以前の復刻物で聞き込んでいたフェイバリット。
CMソングはモノクロTV時代を知っている人なら懐かしい「ワワワ」「明るいナショナル」「仁丹」などは今でも耳に焼き付いているが、あれもこれも有名な作品のほどんどが鶏郎の作品。「鉄人28号」や「トムジェリ」も鶏郎作品だと本盤で知って心底驚いた。
音楽的には「東京チカチカ」、風刺では現代でも通用する「選挙くせものこわいもの」が傑作だと思う。テレビ放送での「トムジェリ」テーマは短いが、実は結構な長尺のよく出来たジャズソングだったりして、ジャズやラテンなどの外来音楽を咀嚼し風刺をスパイスに加えるセンスは粋でモダンだ。後代の芸能界の偉人・巨匠・芸達者を育んだ器の大きさが感じられる。
ちょっと残念なのは、収録時間が足らなかったのか、「トムジェリ」のオリジナル録音が編集され短くなっていること。オリジナルヴァージョンは知っている範囲では、ワーナーがDVD発売記念に出した非売品「トムジェリ コレクターズブック」の付録ミニCDで聴ける。