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序章で書かれた魅力的な架空の書物に出て来るのは、そのものズバリ『黒と茶の幻想』ですし、最終章の舞台は『麦の海に沈む果実』に続きます。まだ第二章の失踪した誰かを追って二人で旅行するというモチーフは『まひるの月をおいかけて』に共通しますし――
この作品にも荒削りでまとまりきっていない不思議な魅力がありますが、作品自体を超えて、存在そのものに価値があるというメタ・フィクション的な構造なのがまた小説としての面白味をぐっと引き上げていると思います。
どこかにあるだろうと言われている幻の本「三月は深き紅の淵を」という本を巡る話で、第一章は主人公がその本を読んだと言われた人達のいる家に招かれる。四部作構成、出版数は数百しかない自費出版作。持ち主から借りた物は1日で返さなければらならない。第二章は女性編集者が本の作家を探る話。第三章、第四章は学園物。
第三章と第四章にテーマの追求の面では似ているが全部構成は異なる。四部作というのは本作もそうであり作中作の「三月は深き紅の淵を」もそうである。第一章は取りあえず作中作について語られる。勝手に話は進み、そしてラストは。ネタバレでしかないのに書けないが、決して読む気を失わないで読み通して欲しい。俺自身、第一章の終了時に屈折しかけただけに。
恩田陸という作家は色んな要素を持っているんだろう。それをこの小説にぶつけてきている。前半で提示された謎が別の方向へ行くんだから明らかに作家はひねくれ者とも思ってみる。面白いことに変わりないのだが、もっと面白くできるはず。
解説で皆川博子が述べているが、本作の解説は難しい。最後に締めくくっている言葉は、なんとなく納得した。
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