三島由紀夫に関しては
『永すぎた春』を拝読させて頂き、圧倒的な文章力と時々照れ隠しのように挿入されるユーモアに魅了されたものである。
そして、本書であるが基本的に短編集であるので、面白いのだけれども、これだけでは到底三島の魅力は伝わりきらないと考える。元々、三島は長編の方が味が出ると思う。それは本書の解題で森毅も認めていると考える。
収録された作品は御幣を恐れず言うのであれば、ピン切りが激しいです。「中世」「家族合わせ」あたりは何とかあらすじはつかめるが、「夜の仕度」は残念ながら話を理解することが出来なかった。ただ、「私の遍歴時代」は面白い。是非、ご覧いただきたい。
それと、本書を読んでいて直感的に感じた事は思想家としての三島と作家としての三島は切り離して考えた方が良いのではないかと思った。なるほど、経歴的に三島は保守派にありがたがれる存在かも知れないが、注意深く読むと決して保守派に都合のよい事ばかり書いている訳ではないと思う。例えば三島は「日本の敗戦は、妹の死に比べたら全くショックを受ける事でなかった。」という旨の記述をしている。こんな発言を三島以外の人間がすればホシュは激怒するだろう。
ただ、それはサヨクが坂口安吾の言葉を安直に引用して、安吾の複雑な思考への深い考察が全くない点と同じであるのだけれども。