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本書は自決に至る数年の三島の足取りを、三島の文業や関係者の聞き取りをもとに克明に再現し、下らない評価を交えずに三島の思想的、行動的経過を浮き彫りにしている。秀作である。
本書で驚かされたのは、自衛隊の一部将校たちと共に決起できそうな雰囲気が当時の三島周辺には存在したらしいということだ。しかし三島は何度かの打診の上、それが不可能なのを思い知る。それを承知で決起し、自決の直前に「こうするより仕方なかったんだ」とつぶやいた三島は、見まごうことなく戦後社会に対する諫死として自らの腹を切ったことになる。
それにしても、アメリカの傭兵に堕した自衛隊のイラク派兵を、涅槃で三島はどのように見ているのか。
新渡戸稲造の「武士道」の中で外国人より「日本では宗教教育がなく、どのように道徳教育を行っているのか」との質問に対し、彼は「武士道」がその役割を果たしている、と記している。
新渡戸の武士道の中には三島が理想としている世界観が広がっている。しかしながら今の日本に武士道は存在しない。ハリウッドから提示された「ブシドウ」に狂喜乱舞している我々を新渡戸や三島はどう思っているのであろうか。
読み物として大変知的好奇心を満たしてくれます。三島由紀夫に興味がなくとも、書店で出会ったら手に取って下さい。
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