前巻の官渡の戦いに勝利して中原の覇者になった曹操が南下し、孫権・劉備連合軍が迎え撃つ三国志中盤のハイライト・赤壁の戦いが中心の巻だが、その前の孔明を招く三顧の礼・長阪の戦いと後の荊州南部で地歩を固める劉備主従の姿が描かれる。曹操の負けっぷりの良さも含めて。
三国志演義の華容道の名場面等は一切なく、赤壁の戦いは曹操対周瑜の戦いで、劉備軍は無力な存在でしかなかったことが強調されるが、それでも曹操と周瑜の駆け引き・作戦が面白く、一気に読ませる筆力はさすが。
その劉備だが、曹操に比べて自身は才智を輝かせないものの、不思議に周囲に逸材を集める、井波律子氏が言う「空なる中心」ぶりが発揮され始める。既に人物像がシャープな曹操と比べて劉備はまだ成長段階にあると言え、その器は本当に大きいのか、大きいとしてそれは人の目で捉えられるのか、続きが楽しみだ。