三善晃の作品は、留学したフランスのスタイルに影響を受けた柔らかい音と見られる向きもあるが、レクイエム(1971年作曲)は違う。違いすぎるほど違う。戦争の残酷さを戦争の当事者による詩(テクストは反戦詩集や特攻隊員の遺書などによる)に歌を付けて表現した…などという生温い次元のものではなく、初めから終わりまで、慟哭そのものである。これほどの厳しい音はなかなか作曲家と言えども書けるものではないし、まして、音に対するこれほどの厳しさを、始終保ち続ける作品はそうそうお目にかかれない。この作品には、どこをとっても癒される類いの音は1音符も無い。でも、何度聴いても感動する。
「変化嘆詠」は、山里の古寺に出る変化(へんげ=化け物)たちを、一休が回向する話。最初の7分間は合唱だけで聴かせ、いきなり入る和楽器が印象的。「四季に」は秋、冬、春、夏という順に並ぶ、アカペラによる短い無調スタイルの作品。変化に富み、美しい。最後のピアノソナタは留学時代の作品(1958年初演)。語法は西洋的だが、この作品を聴くことは、ここからの10年で、作曲家として如何に変わろうとしたか、そして変わったかが手に取るようにわかる。CD自体の構成も素晴らしい。