「俺、あの寅さんの家族の気持ちがよぉくわかんだよ。本人はそりゃ、いいよ。
好き勝手なことしてんだから。けど、家族は大変なんだ」とは、志ん生の長男・馬生の言葉。
ここに一家の悲喜こもごもが表れている。
天才噺家を家長に持った彼ら(家族)が背負わざるを得なかったものの大きさは、計り知れない。
天才が身近にいるのは、濁流に飲み込まれるようなものだ。
周りの者は、圧倒的なパワーに問答無用で巻き込まれていく。
しかし、男であるがゆえにおのずと父と同じ道を歩むことになった二人(馬生、志ん朝)とは異なり、
著者は一歩引いた裏方として、家族のことをあたたかく見つめている。ちょうど彼女の母がそうであったように。
著者にとって志ん生は、噺家である以前に父親だった。その父親のダメっぷりといったらもう・・・。
それをすべてひっくるめて、許し、さらには尊敬すべき存在であった志ん生は、やっぱり特別な人だ。
決して一般的ではない家族だが、“古き良き、ある家族の物語”としても楽しめる良書。