詩人フランシス・ジャムによる三つの物語です。この詩人が暮らしたと同じピレネー山脈の北麓地方を舞台にした3人の乙女たちの物語です。ガラスのように透き通った感性豊かな3人の乙女たちが主人公です。3人とも、この地方の田舎貴族の娘さんです。といっても、3人の性格はもとより、乙女たちが遭遇する出来事がまったく異なり、とても印象的です。
ジャムの詩を、たとえば、同じ岩波文庫で出版された「フランシス・ジャム詩集」によって読むと、田舎の風景の中で多くの動物や植物とともに、愛すべき乙女が何人か登場しますが、この3人の乙女は、それら乙女たちとどこかで袖摺り合わせていても不思議ではありません。愛と自然の詩人が、この本では散文でそれらを描いています。詩より詩的な散文です。
要所に掲げられる挿絵は柔らかな雰囲気を醸してくれます。訳者による解説とジャムの略年譜もなかなか良く出来ています。
自然と親しむチャンスが減ってしまい、また、東日本災害で皮肉にも人の絆が見直されつつある現代において、乙女たちに優しくそっと寄り添うジャムの思いを是非お楽しみ下さい。