帯には「捕物帳シリーズ」と銘打ってはいますが、所謂「捕物帳」ではありません。
主人公が、町方の年の離れた弟で、兄から跡をとって欲しいと言うことを言われており、実際事件解決の手伝いもします。
しかし、もう一つ狂言作家の弟子と言う顔も持っています。
そこで「種取帳」と言う事になる訳です。
従って、五編の短編の多くは、所謂「捕物帳」ではなく、江戸の庶民を扱った人情話と言う色彩も強く出ています。
実際、この中で個人的に最も好きだったのは、冒頭の「短い春」で、そこには女性の儚い恋心が見事に浮き上がって来る仕掛けになっています。
それと気づかない男との桜の花の様な「短い春」です。
男と女のほんの袖すり合う様な出会いと恋心が見事に描かれています。