「夜歩く」と同様に全編を通して渦中の1人が語るという形で物語が進みます。
ただ異なるのは、「夜歩く」が第三者的で物事が坦々と進行するのに対し、語るのが女性だからでしょうか?、こちらは感情の起伏に富んで躍動感があります。
捜査の初期から金田一は登場しますが、渦中の女性を通して語られるのみで(しかも中盤、渦中の女性が社会から行方をくらましてしまうので金田一はほとんど登場しません)、他の作品と違って犯人を追い詰めていくといったスリルはありません。逆に得体の知れない犯人に?金田一に?社会に?追い詰められていくというスリルは満点です。
相続を軸とする金銭欲と人間関係を軸とする愛欲が相まって、オドロオドロしい殺人にさらに華を添ています。
また場の設定についても、同時期にかかれたものが「首」「幽霊男」というところで推し量られるべきでしょう。
全体としては、これほど人間の感情が強く書かれている作品は、横溝のものとして珍しいのではないでしょうか?
「女王蜂」を好きな人は、この作品もきっと好きだと思います。ちなみに私はかなり好みでした。