なぜ、『三たびの海峡』なのか。
このテーマが全てを語っている。なぜ「日本海峡」を主人公は渡らざるを得なかったのか。
一回目は強制であった。主人公は父に代わって大日本帝国の九州の筑豊に行くことを選ばされた。二回目。日本敗戦後、恋人と共に故郷に渡った。三回目。主人公は復讐のために、自らの意志で渡った。四回目は無い。克明にきちっと、情報収集することができた著者、ハハキギ氏の原作に出会ったときの驚き。これほど、生々しく語ることのできる人は福岡の出身者だ。
著者の略歴は、さておき、現在精神科医。具体的。筆致を押さえて書き続ける。この力量は凄かった。内容は文句なし。俺も、こう生きたいと思う男の怒り。復讐するは我にあり。戦時中の話しとしてこれほど明確に描かれた作品に出会ったことはない。流涙。泣いた。