約600ページもあり文庫本にしてはかなり厚みがあります。ここにブラッドベリ氏の短編が26編収められているのですが、どれも傑作です!
これらのうち、実はいわゆるSFと呼ばれるような短編は意外に少ない、否、彼の書くSFは、一般的に想像されがちな、奇想天外な道具や宇宙での非現実的な生活などをフィーチャーしたものというよりは、もっと人間の内面、こころをフィーチャーした普遍的なお話たち。SFとか幻想小説とか、ジャンルではくくることのできない奥深さ。
だから驚くべきことに、2009年の今になって読んでもまったく古びていない!どころか今に至っても、ときには人間のこころの奥底のブラックホールを開け放ちもうれつな嵐を呼び起こして新鮮な流れを呼び込み、
ときには深くあたたかい毛布をふんわりかけてこころの氷を溶かしてくれるのです。
60年代から21世紀の今まで、人間はどれほど進歩したでしょうか?
便利な道具もたくさん発明されたけど、その代わりに失ったものも多い
という実感は今の世でこそだれにでもあるとは思います。
が、彼は半世紀も昔から、するどいメスのような目で移ろいゆくものとそうでないものを見極め、
詩的で美しい普遍的な言語のなかで、小さな物語たちをつむいでいます。
時代の移り変わりや老いなど、時の流れとともに失われていくもの、なにかを得るかわりに失われていくもの、そういうものに彼は焦点をあてているのかもしれません。それゆえの儚さ、悲しさ、そして、やさしさ。
こんな芸当が人にできるものなのか?!まちがいなくお気に入りの1冊、殿堂入りしました!