ウィルバーの個人思想史の中でも新しい段階に属する著作。
「ウィルバー哲学最良の入門書」という宣伝文句がついていますが、個人的意見を言わせてもらえば、これは適切ではありません。
本書はまず今まで触れられてこなかった新しい枠組みであるスパイラルダイナミクスの紹介から始まり、次いで過去の著作への言及、エピソードが頻繁に登場します。従って既にウィルバーをいろいろ読んでいる人にとっては、ちょうど従来の著作の隙間を埋めるような発言を発見できたり、また彼の近年の関心領域についても知ることができる、興味深い内容となっています。
しかし前知識なしに読むと、順序立った手ほどきもないままに何か別の本を紹介しているところばかり印象に残るということになり(ついでに言えば副題の「ビジネス・政治から~」もあくまで研究プロジェクトの紹介が載っているという程度の話ですが、この章の締めくくりが基金提供のお願いだったりして)辛辣に言えば「胡散臭さ」が先立つ構成となってしまっています。これはまずいと言わざるを得ません(ただでさえ日本ではウィルバーがニューエイジと一緒にされたりしているのに!)。
既に『進化の構造』などを読んでいるが、近年のウィルバーには触れていなかったという人には再入門として価値ある本です。しかしこれからウィルバーを読もうと思っている人には、本書ではなくまず『科学と宗教の統合』の方をお勧めします。