このアルバムは演劇実験室・万有引力の94年公演「電球式アンモナイト」からCD発表時点での最新公演「カフカの卵鐘」までの楽曲が各公演につき数曲づつ入っています。
二枚組CDの中に61曲の膨大な楽曲群が入っている様はまさしく劇団「万有引力」の軌跡であり、その活動のダイジェストとも言えるものでしょう。
その様々な楽曲群は劇伴音楽家としてのシーザーの真骨頂であり、数々のすばらしい名曲が時代に流されないきらめきを放っています。
そして同時に、そこからは非常に様々なものが見えてきます。
14年間という長い時間の中での音楽の変化、それを生々しく感じるのです。
この変化というのは音楽的変化ではなく状況的変化の事を指します。
即ち、この頃ウテナで忙しくて適当に打ち込みを作ってるんじゃないかなぁとか、今まで居た俳優さんが居なくなってしまって、この頃劇団の台所事情が苦しかったんじゃないだろうかとか、(まあようはコーラスが薄かったり、突貫的に作ってるというのがわかりそうな感じのサウンド)今まで使っていたシンセを変えたなとか、はっきり言って大きなお世話といえるようなものです。
これらの感想はほかで聞いた雑誌のインタビューやらネットの記事などで裏づけが取れるものもありますが、基本的には印象であって真実ではない部分もあるかもしれません。ですが音楽を聴いただけでもなんらかの時代の流れというか、変遷というか、そういった当時の雰囲気を確実に感じられるのです。
また確実な変化としては2005年公演「アヴェロンの野生児」以降は打ち込みのプログラミングをシーザー自身でなく、現在のasian crack代表で万有引力の俳優でもある飛永聖さんが行っていることがあります。これはやはり多少の音楽的イメージの変化が感じられます。
このCDは61曲というどこから聞いてよいかわからないレベルの膨大さと各公演ごとの楽曲のクオリティのばらつきにより多少雑多な印象があります。
ですが同時にあまりにも貴重で素晴らしい輝きを放つ作品です。
またこのアルバムの中の楽曲は万有引力オリジナル作品以外にも、天井桟敷以来の寺山作品の公演のものも多数収録されているので、寺山修司ファン、天井桟敷ファンにとっても非常に興味深い作品となるでしょう。