本書は、ちくま新書から2005年にでた『万博幻想―戦後政治の呪縛』に、「もうひとつの一九七〇年―放射能の雨とアメリカの傘」を序に追加したものです。
この新たに追加された「もうひとつの〜」では、東日本大震災をうけて、戦後の「豊かな戦後」の終焉が決定的となったことを論じています。そこで、著者は、地域、知識人、開発イデオロギーの諸関係が、万博と原発でよく似た様相であると指摘しています。そして、本論では、大阪万博、沖縄海洋博、つくば万博、愛知万博の4つの万博をとりあげ、特に、環境問題の位置付け、市民参加の位置付けがこれらの万博でどうだったのかを論じています。
本書が設定した問題のひとつ、開発主義と万博の結びつき、さらに万博が人びとに示す「豊かな未来」の幻影は、日本ではもう破綻しているのかもしれません。しかし、本書の終章で少しふれられている通り、アジアでは2010年に「より豊かな未来」を標榜する上海万博が開かれ、大阪万博を上回る観客を集めました。そしてその上海と2010年の開催権を競った韓国のヨスは、2012年に「生きている海と沿岸」をテーマに万博を開催します。アジアの開発主義の手法としての万博、あるいはオリンピックなどのメガ・イベントは、まだ根強く残っているように思えます。
文庫ながらも、戦後の万博に対する批判的視点を明確に打ち出し、その政治性、あるいはイデオロギーを明らかにした秀逸な本だと思います。