私の世代では「七瀬ふたたび」といえばNHKの少年ドラマシリーズである。当時、小学生だった私にとっても多岐川裕美が演じた七瀬とドラマの雰囲気は強く印象に残っている。その後、筒井康隆にどっぷり浸かり、中学生になってから「家族八景」や「エディプスの恋人」と合わせて「七瀬ふたたび」を追体験した。いわゆる「七瀬」三部作はそれぞれ味わいが異なるが、いずれにも筒井康隆の特長である毒やエロティシズムがちりばめられ、中学生にとっては非常に刺激的な作品だった。
今回、30年ぶりに「七瀬ふたたび」に触れ、記憶に残っていたドラマや小説の雰囲気が見事に再現されていることに驚いた(私にとっての「七瀬ふたたび」は少年ドラマシリーズ+新潮文庫なのだろう)。超能力者を扱った物語と言っても、勧善懲悪の戦いが描かれているわけではなく、マイノリティゆえの苦しみや悲しさが描かれ、前編を通して一種の虚無感すら漂っていたといっていい。原作を読んでいても、ハッピーエンドが期待できないことはわかっていたような気がするが、この映画も「いかに生きるか」ではなく、「いかに死ぬか」に向かって進んでいったのではないだろうか。
そのような「七瀬ふたたび」の世界を忠実に再現したことで、前日譚を知らない観客にとっては不親切な作品になったかもしれないが、ある一部の人々には熱烈に受け入れられるのではないかと感じた。
火田七瀬を演じた芦名星はこれまでノーマーク。整った顔立ちの美人で、印象は眞野あずさや天海祐希に似ている。原作者の筒井康隆が「もっとも七瀬らしい七瀬である」と言ったようだが、感情を抑えた演技がとてもよかった。それなのにジャケットの写真は中島美嘉みたいでちょっと怖いのが残念。