作者は、衣通姫の伝説に絡めつつ、オムニバス形式で7人の姫の物語を語る。
7人は織姫の7つの異称にちなんでいる。彼女たちは、古代から近代へ、水際で糸を布へと織りながら、人模様、恋模様を描き出す。
歴史の背後に一つの血筋、古い血と力を受け継ぐ一族の存在を見え隠れさせながら、時代が下るほどに姫たちは神性を失いつつ、織という行為もまた市井のものとなっていくのだ。
そこに謎解きの要素が加わるが、解くべき謎として人が死ぬ。人が死ぬのは女神たちへの犠牲であるとも見なすこともできる。
森谷さんならではのことで、さりげなく大友家持や清原元輔、清少納言といった名だたる文人らが登場しているところも見どころ。
幾重にも織り込まれたシンボルの数の多さに舌を巻く。物語を織りなす糸を読み解くもよし、解かずにすべてを眺めて楽しむもよし。いや、織られたものを解きほぐすのは、やはり無粋というものか。
多様なシンボルが織り込まれ、多重なイメージに遊ぶ、豊穣で、贅沢で、まさに幻想的な美しい物語だった。