リーマンショックで景気が悪化して以降、「格差」や「貧困」に注目が集まり、「資本論」が一大ブームを見せています。資本論を一般向けに分かりやすく解説した本も多数出版されています。本書もそうした本の一つです。
内容はというと、資本論の要点が簡潔にまとめられているのみならず、森永卓郎氏、湯浅誠氏などの論客との対談も交えられており、非常に楽しく読めます。また、労働価値説、剰余価値などの資本論の基盤をなす概念の解説にとどまらず、マルクスが資本主義以降の社会像について具体的に論じていなかったことなど一般的にはあまり認知されていない事実にも丁寧に触れられており、非常にバランスのとれた内容となっています。
個人的には、マルクスが明確に論じなかった「資本主義の次の社会像」を真剣に考えるべき時期に差し掛かっているのではないかと思います。マルクスは、断片的には資本主義の後の社会像を論じていますが、その中で注目に値するのは現在の言葉でいう「ワークライフバランス」の重要性を示唆している点です。マルクスは、労働者が資本家による「搾取」から逃れるためには、労働を短時間にするとともに「余暇」を活用すべきだと説きました。
WLBの実現、新しい公共等々次の社会像の萌芽的な概念が出始めつつあります。これらの断片的な概念を統合し、「あるべき社会像」を論じていく必要があるのではないかと思います。今後、そこまで踏み込んだ書籍が出ることを期待したいと思います。