いかに短編の名手であっても、すべての作品が素晴らしいとは言えないでしょう。
多くの短編集には実際に面白くなかったり、読む人の好みでないものも当然収録されることになります。
けれど、この「一角獣・多角獣」は傑作が揃っているだけでなく、その選択と配列が奇跡的なバランスをもたらしているのではないか。長い時間を置いて何度か読み返し、そう思いました。
ファンタジーの要素を使った「一角獣の泉」で始まり、途方もない、まさにスタージョンの発想の特異さを具現化した「考え方」で終わる。その間には満たされぬ者の救いとなる「孤独の円盤」もあり、「死ね、名演奏家、死ね」のようなスリラーともなんともつかない、ある種切ない物語もあります。つまり、スタージョンのエッセンスの様々な風味を楽しめるというところなのですが、そのあと味は必ずしも甘いものではありません。
その独特な、類例のない味わいは、読んでみないときっと分からないでしょう。
そして、スタージョンの作品の良さは発想の特異さだけではありません。
彼のいくつかの作品には、決して癒されることのない孤独、けれど癒されぬことを知りながら救われることを求める心、そんなものを感じます。スタージョン自身の心の投影かも知れません。
本書の二作品に登場するシジジィ(syzygy)という言葉の使われ方は、良くそのことを表しているのではないでしょうか。
長く手に入らなかったこの傑作短編集は、今読まなければ、またいつ読めるか分からないかも知れません。
お早めにどうぞ。