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本書は「第3回講義」の最も詳細な記述を残したエミール・コンスタンタンの聴講ノートの翻訳である(ただし、講義のすべてではなく、「第1部」は中途まで)。丸山圭三郎によっても紹介されているとおり、聴講ノートの翻刻は、ルドルフ・エングラーによる「校訂版」があり、そこには他の3人の学生のノートも収録されているが、そこでは「バイイ=セシュエ版」の順序が保持されている??め、講義の順序で通読することは困難だった。本書は、講義の順序どおりに復元した新たな校訂版(小松英輔による)を底本としており、ようやく日本語でソシュールの講義の全容に触れる機会が生まれることとなった。
その点で、本書のもつ意義は決して小さくないが、先行研究をほとんどすべて無視したことによる欠点を抱えていることも、また否定できない事実である(減点の理由)。訳語に問題を抱えていること、他の学生の記述や自筆草稿との比較対照がなされていないこと、バイイ=セシュエ版がいかにこの原資料を扱ったのかが扱われていないこと…。
こうした問題を抜きにしてこの聴講ノートを読んでも、この講義は「言語学入門」以上のものに見えないかもしれない。それだけに、この恐るべきノートの!もつ真の射程を閉ざしてしまう可能性をこの訳者たちが自覚しているとは思えないことは、画期的な試みだっただけに、あまりに残念と言わざるをえない。
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