カメラファンにとって、オリンパスOM−1は衝撃的で、神秘に満ちた魅惑のカメラです。そのOM−1がいかにして誕生したのか、その誕生の軌跡と苦悩が描かれています。入社早々から頭角を現し、オリンパスペンシリーズの完成に追われていた米谷氏が、営業から強い要請により35mm1眼レフカメラの開発に着手する。営業はそのコンセプトを持たず、「とにかく作ればいい」「既存の有名ブランドカメラと同じでいい」などと適当な事を言う。「それでは他から買って名板を張り替えるか?」といえば「それならなお結構」と言い返されたという。作れば売れる時代の話とはいえ、暢気な話だ。しかしそんな中、米谷氏は独自の哲学を持って、その考えを否定する。「既に世の中にあるものを作ることは無意味、二重投資だ、資源の無駄遣いだ」「どうせ作るなら、今無いものを、ユーザーが待ち焦がれたものを作ろう」そして、一眼レフの3悪「重い・大きい・うるさい」追放を目指し、オリンパス社の誇る内視鏡や顕微鏡システムともリンクした一大プロジェクトが動き出した。 米谷氏が描いた夢があまりに壮大であり、読んでいて感涙が滲んでくる場面もあった。このような天才が存在することを本書を機会に知ることとなり、OM−1の魅力が色褪せない理由を理解した。