カントの「純粋理性学批判(上巻)」と格闘して負けて以来、私はとにかく教養という壁にただひれ伏すのみである。毎日の新聞を読むとコラムや文化面だけでなく、経済、国際情報の解説にも、カントの仲間を引き合いに出してのくだりがあったりして、それが小難しい記事の理解に結構役に立つ。それで、ノートにそれらをメモしてあとで広辞苑やインターネットで調べてみる。最近はそんな生活が続いている。そんなときにこの本がでた。366人の教養家たちと木田が繰り広げるバトルの様相である。それに私も加わる。通勤電車や、寝床あるいは便所で私は、論理的思考の便法とか、日本の居酒屋めぐりとか、よくわかる会計、人事、営業みたいな本を手に取る。週末はときどき競馬新聞だ。だからハードルは高そうだ。しかしこの本を手に入れた。そして懐かしい再会や初対面、知らん振りして通り過ぎた人達と出会う。木田は何も言ってはくれない。そこが心地よい。いくつかの再会の中では、岡本太郎が秀逸だ。「いつも読書しながら、一種の絶望感をおぼえる。・・・」私は木田の教養にぶら下がって、また地面におり、ふたたび体全体でそれにぶら下がりその感触と塊、冷たいそして熱い情熱の中に浸ろうと思う。一人に一冊どうぞ。