有島武郎の童話8篇。どの作品にも象徴的に表れるのが「無垢な存在」。オスカー・ワイルドの『幸福な王子』翻案には、人間ではなく燕だけれど。無垢でありながら犯してしまう過ちや、不安についての表現が素晴らしい。
表題の『一房の葡萄』や『おぼれかけた兄弟』『碁石を飲んだ八っちゃん』などは、幼さゆえの行動が描かれていて印象的だ。
『一房の葡萄』:理解のある大人が側にいることで、子供は立ち直ることができるのだと思う。このような大人の存在は必要だ。
『おぼれかけた兄弟』:誰でも自分が一番大切なのだ。が、「裏切った」「裏切られた」という感情は大人になっても消えるものではない。
『碁石を飲んだ八っちゃん』:この「ぼく」の気持ちは痛いほど分かるな・・偏重した愛情のかけ方は、絶対に子供にとって良くない。最後に母親の愛が感じられて心が和む。
他にも5篇あり、うち『真夏の夢』はストリンドベルヒの翻訳、『燕と王子』はワイルドの翻案。これら5篇は普通の童話に近い印象を受ける。