おそらく井上さんはこれを大幅に改稿して単行本化するつもりだったのだろう。
小説現代に1986年(昭和61年)から1992年(平成4年)の7年間かけて連載。
バブル景気真っ最中から、崩壊までの期間である。未完。
ときは1986年。日本は米ソ中英の4カ国によって分割されていた。
ソ連は北ニッポンを(福島をのぞく東北5県と北海道)
アメリカは中央ニッポンを(京都、奈良、和歌山以東、福島まで)
英国は西ニッポンを(大阪、兵庫以西、九州、沖縄)
中国は四国ニッポンを分割統治していたのである。
トウキョウ35区は4カ国によって、六本木交差点を境に、分割された共同統治区域である。
さらに連広告側45カ国が細分化された自国管理地をトウキョウ内に持っていた。
この日本を再び統一しようという面々が主人公だ。
下巻では捕縛された他のメンバーをよそに、ひとり逃亡をつずける
北ニッポンの地理学者、サブ−シャこと遠藤三郎の活躍が中心に活躍する。
彼ははサヴァン的な地理の知識を持っている。
上巻では、説明が多く居冗長だったのが、
井上さんが、サブーシャに国家感を語らせるようになって、俄然面白くなる。
これはもちろん井上さん自身の酷寒であるが、曰く、
・日本人は自発的服従心を持っている。服従するのが恥ずかしいから、
自ら、果敢に服従するのである。こんな国は日本しかない。
・新しくつくろうとしている日本はどんな国なのか。アメリカやイギリスが統治する
中央ニッポン(トウキョウ中心)や、西ニッポン(オオサカ中心)行過ぎた
市場主義、資本主義ではない国だ(これは現代日本のカリカチュアライズである)
もちろん共産党独裁の社会主義国でもない
・ノーベル賞などとらなくてもよい、オリンピックのメダルもいらない。
世界の国々が、困ったときに、頼りにするような公正無私な国である。
ところで一つ追記。
犯罪心理学者というものを馬鹿にしているところが面白い。
昨今のテレビに出る犯罪心理学者は、お前は犯人と一緒に居たのかという推理や
「犯人はおそらく男か女ですね」というような誰でもいえる推理をするが、
個々に登場する体制側期待の犯罪心理学者は「人相見」出身の女子短大教授なのである。