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25 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
社会構造の真実,
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レビュー対象商品: 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) (文庫)
これだけレビュー数が多くて5.0に近いということからも、いかにこの作品が興味深いか分かります。SFといっても奇想天外な科学技術はほとんど出てこず、むしろ退廃的で、実際に書かれた1948年(アナグラム)から夢想しても尚、文明進化が見られません。 しかし物語を読み進めるにつれ、その理由が判明する・・・。 個人的にこの物語で最も心を奪われたのは、舞台背景と核心を突く、作中に登場する或る書物の記述。どうしてこういう社会なのか、を論理的に語っています。その設定の見事さと同時に、これは実社会に照らしても真実なのでは・・・という疑念が湧き上がってくるのです。 「権力を持って富裕を得ることが目標ではない、権力そのものが目的である」「無思考こそ階層社会の基盤」といった概念だけでなく、科学的物質論ですら「無いと思えば無い」という一見暴論だが説得力ある解説でぐうの音も出ず、遂には「本当に戦争をしているかどうかは問題ではない」・・・・ 実社会に照らして、実はどれもあてはまるのではないか、と思わせる迫力と論理構成。確かに今の日本は民主主義ですが、これだけ政治に無関心無気力な国民が大多数なこと、世界はWebを介して情報がリアルに届くはずなのに物理的距離感は埋まらず、隣国の戦争も実態が分からない、格差社会が広がり本当の富裕層こそが国を動かしているのではないか・・・とさえ想像し始めると、もう全てを疑いたくなります。 しかし逆に、主人公の肉体が体感する快楽と辛苦だけはリアルなものとして表現され、虚構の中の唯一の真実であると同時に、それに対抗し得る唯一の力だとも暗に示されています。だからこそプロール(下層)こそ希望だと見出すのですが・・・・・・・・・ 私は政治学に疎いですが、60年以上も前に社会の真理深層を鋭くえぐり、巧みに表現した本作、必読の価値ありです。
109 人中、102人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
待望の新訳版,
By The Lackey Chardonnay (東京都世田谷区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) (文庫)
前版の新庄訳に長年親しんできたのですが、新訳の出来映えが気になり購入。感想としては、以前の訳よりかなり柔らかい雰囲気です。 一旦訳文に慣れてしまえば、すらすらと先に読み進められます。 とはいえ、古典の風格もしっかりと失われずに残っており、 全体的には好印象でした。 英語をベースとする新言語ニュースピークの処理ついては 前訳を部分的に引き継ぎながらも、「偉大な兄弟」が 「ビッグ・ブラザー」になっていたりと、現代的に変更されています。 このあたりは当然のアップデートと言えるでしょう。 また、トマス・ピンチョンの解説を読んで、監視社会や全体主義への 警鐘といった政治的な意味合いだけなく、ラブストーリーとしての 骨格がしっかりあるんだなという事に気付きました。さらには、以前は 読み飛ばしていた付録部分をめぐるピンチョンの新解釈も斬新でしたが、 彼に賛同できるかどうかは意見が割れるかもしれません。 私は心情的には、ピンチョンの希望に満ちた解釈に賛成したいです。 この本の「文学的賞味期限」はまだまだ続くはずです。 このような新訳で読めるようになるのは、幸せなことだと思います。
41 人中、36人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
恐ろしい小説,
By <おとなの社会科> (日本) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) (文庫)
次のページをめくるのが怖い―そんな読書をしたことがありますか?私はありませんでした。『一九八四年』を読むまでは。『一九八四年』の恐怖は、人間という存在への信頼が完膚なまでに叩き壊されるという、その一点に由来する。私は人類滅亡モノに目が無いのだけど、この本の舞台である全体主義的近未来は、この世の終わりの風景よりもよっぽど恐ろしい。人類滅亡というモチーフは、読んだ後に、今この世に生きている人間たちが愛しくなるという効果を持つ。それとは逆に、救いの無い未来を暗示するディストピアものは、今生きている人間たちを見る目がいっそう懐疑で満ちるようになる。ページを繰るうちに、読者のヒューマニズムが瓦解していく。外部からの作用によって、人間がこんなにも脆くなってしまうなんて!「この本に書いてあるようなことは、自分には絶対起こりえない」と断言できる人はいないだろう。本書の登場人物たちの顛末に戦慄するのは、彼らに自分自身を発見するからだ。人間不信に陥ると同時に、自分不信になる。 そしてさらに不気味なことに、キャラクターのみならず、物語の舞台までが、今私たちが生きている社会との類似性を備えている気がしてならない。プロパガンダに踊らされる人々を、いったい誰が笑えるだろうか?過去の改変に勤しむ作業は、こちら側の世界でも進行中かもしれないというのに。“党の掲げる二大目標は、地球の全土を征服すること、そして独立した思考の可能性を徹底的に潰すことである。”幸いにも私たちの暮らす世界は、まだ「ビック・ブラザー」に支配されていない。けれど、後者の目標は、静かに達成されつつあるような気がする。目には見えない、現実世界の「ビック・ブラザー」に対抗するために、この本は読み継がれていかなくてはならない。『一九八四年』が禁書にならないために、今自分に何が出来るのか。この世に現存する、最高の反面教師のひとつ。(by ちゅら@<おとなの社会科>)
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